鏡外シリーズで最もデザインされたのが古く、何度もリメイクされているキャラ。一時期は時雨々のTwitterアカウントのヘッダー画像に使われたりもしていた。
彼女はかつて滅びた旧都の天皇。当時は彼女自身が直接、都の政治を担当していた。なぜ彼女が統治を行っていたかに関してだが、石凝宮という名の示す通り、彼女は鏡外の成立に非常に深く関与している。
石凝姥命の複製として生まれた後にその世界に都を作り、隔世と鏡外の結び付きを弱め独自の政治を行おうとしたが、失敗し海底に隠居していた。
そもそも鏡外というのは、日本神話における三種の神器の一つ、「八咫鏡」と関連した世界である。作中の時間軸(注:八耶の鏡外入りは2014年の出来事である)では既に八咫鏡と鏡外はほぼ切り離されてしまっているが、旧都があった頃はまだ関わりが深かった。具体的には、鏡外で起こる出来事のほとんどは隔世(現実世界)に影響されたものだった。
八咫鏡を作ったのは石凝姥命という神である。かの有名な神話「天岩戸」での説明をすると、八咫鏡は引きこもってしまった天照大御神を連れ出す策の重大な鍵だ。
岩戸の外に居る神々は、「天照様より尊い神が現れた!」と盛り上がっている。外の様子が見えない天照は、一体どんな神が現れたのかとそれに興味を示した。そこで岩戸の入り口を少しだけ開き、その神の姿を見ることにしたのである。するとそこには鏡があり、天照自身が映し出されたのだ。
この後、もっとよく見ようと身を乗り出した天照を引きずり出すというストーリーだ。岩戸の外に居る神たちは、いかにして「天照に無礼でなく、尚且つ興味を引かせるか」を考えたのだろう。その為に、「天照より尊い神」を誰かに演じてもらうのではなく、天照そのものを天照に見せる必要があった。そんな事が出来るのは、鏡だけである。
ともあれそんな目的の為に産み出された八咫鏡であるが、もちろんその製造者である石凝姥命はこの鏡をこしらえた時に、そこに映った自分を見たことだろう。鏡外という世界は、その時に生まれたものである。
ここで、鏡のこちらの石凝姥命と、あちらのそれが別れた。そして後にあちらの方は、石凝宮なみという別の名を用いる事にした。以来、ありとあらゆる物は彼女と同様に、この鏡に映った瞬間に複製されていく。そして隔世と同じ歴史もまた、複製されていった。
旧都が現在の鴨草京の位置に成立したのは、794年の事である。この10年ほど前、隔世で長岡京が成立した頃から、鏡外の住人も少しずつ北に移り住んできていた。彼女はこの流れを読み、鏡外を自分の意のままにコントロールしようと企てた。と言うのも、神話の時代はいざ知らず、すっかり発展した人間の文明に当時の彼女は関わっていなかった。八咫鏡を作ったのが誰か、なんて事を気にする人間はもはや誰も居なかったのだから、石凝宮なみはただの町人と変わらなかったのだ。
彼女の立てた都に、人はみな移り住んだ。彼女の政治のもとで、人は生活を営んだ。
隔世と同じ歴史を辿る当時の鏡外にとって、一番恐ろしいのは隔世の政変だった。そしてもちろん、何よりこれを恐れていたのは石凝宮なみだ。9世紀には大きく発展を遂げた旧都も、その後は少しずつ廃れていく。何百年と経ち、いよいよ12世紀後半にはまた隔世で政変が起こりかけていた。
彼女はその運命に抗うため、隔世と鏡外の強い結び付きをいくつか切断してしまった。それまで八咫鏡の中の世界だった鏡外は、この時を境にしてただの異世界へと変わった。
残念なことに、鎌倉幕府の生まれなかった鏡外でも旧都は滅びた。そもそも彼女には政治の才能が無かったのだ。今まで旧都が潰れずにずっと残り続けていたのは、ただ隔世の平安京がしっかりと続いていたからだった。無情にも旧都は捨てられてしまい、それから鏡外は群雄割拠の戦国時代へと突入する。だが石凝宮なみにはもう、また新しく都を立てる気力など残っていなかった。ゆえにしばらく鏡外を放浪した後、旧都から遥か西の「陸が果てる地」の海に沈んでいったらしい。
鏡外には神湖水道局という団体がある。この団体は鴨草京をはじめとする多くの土地に、神湖という湖の水を供給しているのだが、その代表者は玉祖宮めの。彼女と石凝宮なみは古くからの付き合いがあり、海底に隠居していた石凝宮なみを見つけたのも彼女だ。2人は後に自らに仕える人間を見つけ、それぞれの勢力を持つことになる。
御虹姉妹との出会いは割と最近だ。旧都の崩壊以来、勢力を率いる事にはかなり後ろ向きだった彼女。だが、彼女を必死に探し続けた少女・御虹単との出会いに心を動かされた。
そうして彼女はもう一度、自分を天皇とする都を立てる。実際に政治を行うのを、彼女ではなく政治に長けた御虹重とすることで、今度こそ万代の京とするつもりのようだ。かつての旧都の跡地を再興して生まれた鴨草京は、今では鏡外の最大勢力となった。